11月 十一月 霜月 November

ずっとやってみたいと思っていても、なかなか条件が揃わず、実現できないままでいることがいくつかあります。私の場合、その中の一つが「活版で印刷すること」でした。

機会はいつもある日突然訪れます。まずはその手法が表現手法として最適と思われる仕事の依頼。でも最大の難関は、依頼主に見積り額を承認してもらうこと。活版での制作見積りは少し高くなるため依頼主から承認されにくく、いかに仕上がりに影響なく、提供しやすい価格にできるかは、これまでの大きな課題でした。

しかし今回はふさわしい出会いも突然訪れました。ある時実家の父が何気なく再生していた録画番組に、その工場は映っていました。しかも事務所から徒歩圏!これはお話をきいてみない訳にはいきません!さっそく受話器をとり訪問。笑顔のやさしい工場の番頭さんは、私の無知な質問にもていねいに答えて下さいました。

特殊紙で変型、ごく少量数という、非効率な要求だけに高額になる条件をうまく解決できたのは、経験豊富なベテランのおじさま職人さんたちのおかげでした。ビジネスというものはおそらく効率を求め、利益を追求するのが正しい姿なのかもしれません。でも味わいのあるよいものを残すには、ちょっとしたことを試せる機会も必要です。そんな時一人の人が時間をかけて積み重ねてきた経験や、人間同士のつながりがつくるネットワークのような見えない技術やしくみは想像以上に大きく、深いものだと改めて気付かされました。

その佐々木活字さんで制作していただいたカード類ですが、新年に仙川でオープンする日本食レストランで使われます。どちらのこともBirdsのページでご紹介したいと思います。